第11話 手術室で奪われた未来

★2003年11月26日に椎間板ヘルニアの手術を受け、1週間の絶対安静ののち、すぐにリハビリに入り、早ければ2004年1月6日レッチェ戦復帰をめざし、トレーニングを進めていく予定でした。ところが、退院後、オフィシャルサイトが報じるリハビリ内容は、毎日「セラピー」「ジムでのリハビリ」ばかりで、ランニングさえ始められないまま年が暮れてしまいました。
 復帰予定日も過ぎた1月14日、オフィシャルに退院後初めてのランニング写真(右)が出たとき、COCO fan boardは大はしゃぎでした。冬の日差しの中を、トレーナーに付き添われて走る姿は心細げでしたが、私たちは彼がもうすぐピッチに戻れると信じて疑いませんでした。

★でも、真実は過酷でした。クラブは事実をかくしていましたが、ココは手術直後、左足がマヒして、階段さえ昇れなくなっていたのです。神経断絶(dinervation)。不自由になった足に驚き、問い詰めるココに、医師は「大丈夫」と言い続けたといいます。やっと告げられた真実は、「神経が傷つきマヒが起こっている。神経を治療することは不可能で、自然に回復するのを待たなくてはならない。長くて1年半かかるかもしれない」というものでした。そんな話を9か月後(2004年10月7日)になって彼自身が語ったとき、想像したよりもずっと悲惨な事実に、あんぐり口があいてしまったものです。

★そんなこととは知らず、チーム練習への復帰を、今か今かと待ち続けたCOCO fan board。いつの間にか季節は春になろうとしていました。
 3月15日、めずらしくゴシップではないココニュースが流れ、そこには彼の選手としての復帰を疑問視する内容が書かれていました。インテルは、翌日すぐに、コンビ医師とココのコメントを発表。医師は「椎間板ヘルニアは治癒した。あとは神経の自然治癒を待つしかないが、リハビリはできるので、競技のための正常な運動を取り戻せるだろう」と説明しました。一方、ココは「時間がたつことをくよくよ考えたくない。ちょうど手に、これから物語が書かれる白い紙をもっているような感じなんだ。でも、僕は物語の最後を知っている。:100%の状態になって、ネラッズーリのシャツを着て、インテルとともにピッチに戻る。そして、今シーズンの不運が僕から奪った時間を取り戻す」と語りました。

★ところで、インテルのオフィシャルサイトでは、毎日細かくケガ選手のリハビリ内容を伝えていました。それを見ていると、ケガから復帰する選手たちがたどるプロセスがわかりました。ジムでの筋力トレーニング、外でのランニング、長距離ランニングやダッシュを含んだランニングなどだんだんに内容が強化され、併行して砂場での運動、ボールを使っての技術的トレーニングなどが行われたあと、普通はチーム練習に復帰します。
 ところが、ココのリハビリ内容は、だんだん強化されたかと思うと、数日休みが入り、また室内トレーニングやセラピー(治療)に戻ってしまうのです。きっと普通のプログラムが組まれても、そのとおりに進むことができなかったのでしょう。神経がマヒした状態というのは、リハビリを頑張っても普通の筋力回復ができない…そんなことも後でわかったことでした。

★そんなある日、リハビリニュースからココの名前がふっつり消えました。不安な3日間が過ぎ、4月14日、突然「リグーリア州レリチでのカンヅメトレーニング」が発表されました。翌日からインテルの提携施設で2週間にわたり、個人的な集中トレーニングを行うというのです。「インテルは1人の選手のためにここまでしてくれるのか」と感動。ココを待ち続けているザッケローニ監督の意向もあったのかもしれません。とにかく私は「クラブや監督の厚意に応えて、トレーニングを頑張り、今度こそチームに復帰してください」と祈りました。
 そして、カンヅメトレーニングから帰った5月1日、ココはついにチーム練習に復帰しました。トレーニング開始にあたってのココの目標「シーズンの最後にピッチに戻る」がかなうのか?!……COCO fan boardは快気祝いモードでした。
 ところが、それからすぐの5月6日、レリチの近くの観光地のホテルでデートするココとマヌエラのパパラッチ写真がすっぱ抜かれるという事件が起こりました。ほぼ同時に、ココはなぜかまた個別練習でのリハビリに戻ってしまいました。
「はしたないゴシップの罰か?」
 そもそも、このカンヅメ計画は、場所がロマンチックな観光地周辺だったため、発表後すぐに2人がデートするのではないかと書き立てられました。そんなメディアに対して、わざわざ初日にレリチで記者会見を開き、ココ本人が「ビショッチ先生とトレーニングをするためにきた。邪推されるようなことはない」と断言していたのです。
 ばか! 周囲の親切にこんな形で応えるなんてサイテイ! 
 私は「このやっかいな人ともやっとお別れだわ」とつぶやき、怒りをこめてパソコンの電源を落としました。

[おまけ話]
【右】なぜか少しだけチーム練習にまぜてもらった3月26日。ココの足の細さに、みんなで驚きました。もう2か月もリハビリしているのに…。

【下】5月1日、カンヅメトレーニングから戻りチームに復帰したココを見守るザッケローニ監督。来季の補強を聞かれた4月5日の記者会見で、「われわれにはココがいる。彼が調子を戻せば、問題は解決する」と言ってくれたのに、この写真の1週間後、ココは再び個別トレーニングに。

【その下】5月5日、チームから離れてたたずむココ。笑っているように見えるけれど、実は、チーム練習についていけなくて落伍している姿だった。

第12話へつづく)

(02-03)第1話 運命の再会  第2話 期待がいっぱい  第3話 だめだめなココ  第4話 復活の兆し  第5話 クーペルさんの疑念

第6話 月夜に走ったエスプレッソ  第7話 海を渡って届いた「無念」  第8話 1試合だけの復帰  第9話 最高の男!

(03-04)第10話 苦難への誘い  第11話 手術室で奪われた未来  第12話 ここはどん底?

(04-05)第13話 愛されないということ 第14話 飼い殺しの刑  第15話 波乱の就職劇

(05-06)第16話 トスカーナに甦る

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